2019年5月23日木曜日

【裁判傍聴記】私はオレオレ詐欺をやっていません 無罪です

本件は、詐欺(オレオレ詐欺)、詐欺未遂、窃盗で起訴された被告人が、無罪を主張して全面的に争うことになる裁判です。この公判の行方は不透明ですが、メディアで報道されている以上に、日常的な出来事としてオレオレ詐欺が横行しているということをあらためて知らされました。


【起訴状】詐欺、詐欺未遂、窃盗
【被告人】20代後半 男性


 事件の概要 

起訴状は4件ありました。

1件目

平成30年12月〇日、被告人は関東地方のA県に住む78才の女性に親族に成りすまして電話し、女性の長男が急にお金が必要になり、長男の上司と待ち合わせて上司に50万円を渡すように言いました。女性はA県B市の指定された場所で長男の上司と名乗る受け子Sに現金50万円を渡しました。

罪名は詐欺

2件目

平成31年1月×日、被告人は関西地方のC県に住む92才の女性に親族に成りすまして電話し、女性の長男が急にお金が必要になったので、自宅に長男の知りあいが向かうので、30万円渡すよう言いました。女性が自宅で待っていると長男の知りあいと名乗る受け子Sが到着し現金30万円を渡しました。

罪名は詐欺

3件目

平成31年1月×日、被告人は中部地方のD県に住む86才の女性に親族に成りすまして電話し、女性の孫が急にお金が必要になったので、自宅に孫の知りあいが向かうので50万円を渡すよう言いました。女性が現金は用意できないと言うとキャッシュカードを渡すよう言いました。女性が自宅で待っていると孫の知りあいと名乗る受け子Sが到着したのでキャッシュカードを渡しました。
被告人は詐取したキャッシュカードで現金50万円を引き出しました。

罪名は詐欺および窃盗

4件目

平成31年1月×日、被告人は関西地方のE市に住む79才の女性に親族に成りすまして電話し、女性の長男が急にお金が必要になり、自宅に長男の知りあいが向かうので100万円を渡すよう言いました。女性は不審に思い警察に相談したところ、警察は特殊詐欺の疑いで被告人宅で待ち構え、受け子Sが到着したところで詐欺未遂の疑いで現行犯逮捕しました。

罪名は詐欺未遂

被告人は、平成30年11月下旬、自身の知り合いのSを誘い、特殊詐欺の受け子の役割を担わせました。4件の事件で被告人は受け子Sの現場待機状況を確認し、不安にかられるSを励ましていました。
受け子Sには、事件ごとに取り分3万円を渡していました。

被告人は、以上4件の詐欺、詐欺未遂、窃盗事件について共謀共同正犯として起訴されました。


 起訴状朗読 

検察官が事件の概要に記載した事実を公訴事実として朗読しました。


 罪状認否 

被告人 

私は、ある人に人を紹介してほしいと言われて、今回の事件で受け子となったSを紹介したが、紹介しただけで、事件のことは一切知らないし、関わりもありません。

弁護人 

被告人同様、今回の事件の公訴事実全てを争います。


 冒頭陳述 

検察官が、事件の概要に記載した内容について陳述し、証拠請求しました。

弁護人は、検察官が申請した証拠については全て同意したため、証拠調べを行いました。


 検察側証拠調べ 

検察官は、被害者の「被告人に対しては厳重な処罰を望む」との供述調書、押収した受け子Sの携帯電話とカバンの写真、携帯電話の通話明細等を証拠として提出しました。


当日の公判手続きは、ここまで進みましたが、被告人は警察と検察の捜査段階から、本公判廷でも一貫して公訴事実を否認して争う姿勢を見せているため、次回公判廷までに検察側・弁護側双方が立証主旨を明確にすることとなりました。


 裁判の向う側 

今回の裁判では、被告・弁護側が公訴事実を全て全面的に争うとなりましたので、進展は次回公判以降ということになりました。

今回の事件では、受け子Sが現行犯逮捕されており、被害者の証言もありますので、4件の犯罪事実に疑問の余地はないと思いますが、被告人が関与していたのかどうかは現時点では不明です。
よって事実の解明は次回以降の公判を待ちたいと思います。

今回の裁判で驚いたのは、被害者がいとも簡単にお金を受け子に渡している現状です。

今回の4件の犯行は、高齢女性に特化して狙っているのは分かりますが、被害者側も、これだけオレオレ詐欺が社会的に問題視され、恐らく家族や親族からも注意するよう言われていただろうに、何故たやすく大金を渡してしまうのか。

ここにも大きな問題があると思います。高齢者はもう少ししっかりと意識をもって対処してほしいと思います。犯罪者は一人成功すると、味をしめて次々に犯行を繰り返します。

あなたが食い止めることが、犯罪を抑止することに繋がります。

次にこの裁判で驚いたことは、犯罪が実に短時間に広範囲で行われていることです。
関東地方・中部地方・関西地方と受け子Sはビジネスマンのように飛び回っています。狭いエリアだと足がつき易いでしょうから、これを避けるのが目的だと思いますが、受け子にこういう動きをさせるには、しっかりした司令塔が指示し監督することが必要かと思います。またある程度組織化することも必要かとも思います。

特殊詐欺は巧妙化、広域化しています。被害者側もしっかりとした知識と意識をもって、地域でも高齢者への声掛けなど特殊詐欺の被害根絶に向け取り組んでほしいと思います。

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