2019年5月19日日曜日

【裁判傍聴記】息子から「盗ったらあかんで」と言われていました

高齢女性の被告人は50代の息子と一緒に買い物にきていたコンビニで、950円の電卓を万引きして店員に確保され、駆け付けた警察官に逮捕されました。

大津地方裁判所

罪 状 窃盗罪(万引き)
被告人 70代後半 女性
求 刑 懲役3年6月


 事件の概要 

被告人は50代の息子と一緒に買い物にきていたコンビニで、950円の電卓を万引きして店員に確保され、駆け付けた警察官に逮捕されました。コンビニの防犯カメラには陳列されていた電卓をケースから取り外して、自分のカバンに入れる様子が撮影されていました。

被告人には昨年にも窃盗による執行猶予付きの前科と、傷害による罰金刑の前歴があるため、50代の息子が同居して監護にあたっていました。

息子は過去の例があるので同じ犯罪を犯させないように買い物には常に同行して、また店の中でも一人にさせないようにしていたと証言しています。当日は、コンビニに入る直前にたまたま母親と口論となったため、母親と別々に行動する時間が出来てしまったということです。

被告人は近くの市民病院の心療内科で「鬱病」と診断され、通院治療を続けていました。


 被告人質問 

(弁護人側)
弁護人 
あなたはいつ万引きをしたと認識しましたか。
被告人 
警察で防犯カメラの映像を見せてもらって、自分がやったとわかりました。

弁護人 
そのときは電卓が必要だったのですか。
被告人 
特に必要ではありませんでした。

弁護人 
では何故盗ったのですか。
被告人 
よく判りません。

弁護人 
息子さんから日頃からなんと言われていましたか。
被告人 
息子からは「盗ったらあかんで。」と言われていました。


 論告求刑 

検察側 求刑は懲役1年6月


 弁護人最終弁論 

被告人は窃盗の事実を認め反省しており再犯しないことを誓っています。また同居する息子がこれからも同居して再犯しないよう監護すると証言しています。高齢で鬱病も発症して治療中です。よって罰金刑として社会の中で更生させることが肝要と思料します。


 裁判の向う側 

高齢者の犯罪が増加傾向にあるとのことです。しかもその大半がスーパーやコンビニでの万引きで、実刑判決を受けていても再犯率が高いという統計が出ています。また女性の高齢者の検挙者の大半が万引きによる窃盗犯ということです。私が傍聴している刑事事件の裁判でも高齢の女性の万引き事件が多くあります。高齢者は年金や貯金などの金銭面の不安と、高齢による認知症の発症などからの認知力の低下から、犯罪に手を出してしまうという事例が多いと言います。今回の事件でも、特に必要のない電卓を無意識に万引きしていました。

これから益々高齢化社会となり、高齢者を支える人達がむしろ少なくなりつつある日本の社会はどうなっていくのでしょうか。まもなく自分の身に降りかかってくる問題です。しっかり考えていく必要があると思いました。

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