2019年5月20日月曜日

【裁判傍聴記】誘っていただいたのでついつい飲んでしまいました

被告人は■市内の国道を走行中、赤信号で停止しましたが、眠気に襲われブレーキペダルから足を離したため、前方に停車中の自動車の後部に追突しました。被害車両の運転者の通報により警察官が到着し、被告人に事情聴取しましたが、酒の臭いがしたため呼気検査を実施したところ、基準値を大幅に上回る「0.55mg/L」のアルコールを検知したため、酒気帯び運転の現行犯で逮捕されました。

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資料画像(by Pixabay)

罪 状 道路交通法違反(酒気帯運転)
被告人 40代後半 男性
求 刑 懲役8月


 事件の概要 

平成30年9月〇日の早朝、被告人は■市内の国道を走行中、赤信号で停止しましたが、眠気に襲われブレーキペダルから足を離したため、前方に停車中の自動車の後部に追突しました。被害車両の運転者の通報により警察官が到着し、被告人に事情聴取しましたが、酒の臭いがしたため呼気検査を実施したところ、基準値を大幅に上回る「0.55mg/L」のアルコールを検知したため、酒気帯び運転の現行犯で逮捕されました。

(参 考)   

呼気1リットル中のアルコール量の違反点数と処分
・0.15mg未満
違反となりません。

・0.15以上0.25mg未満
13点+免許停止90日+3年以下の懲役または50万円以下の罰金

・0.25mg以上
25点+免許取り消し(欠格期間2年)+3年以下の懲役または50万円以下の罰金


当日被告人は、仕事を終え会社で行うバーべキューに参加しました。被告人は翌日早出の出勤で自動車を運転することが分かっていましたのでバーベキューで酒は飲みませんでした。バーベキューが終わり、廻りの仲間は隣の市の▲市の店で飲み直そうという話になり被告人も誘われました。仲間はタクシーの乗り合わせて行きましたが、被告人はタクシーが定員オーバーで乗れなかったために、「次の店でも酒を飲まなければいいや」ということで、翌日仕事で使う普通貨物自動車を運転して、次の店に向かいました。到着後、店の近くの有料駐車場に駐車し店に向いました。

被告人が車で来ていることを知らない廻りの仲間は、被告人に酒を勧めてきました。被告人は断ることができず、ビール他数杯の酒を飲みました。被告人は警察の取り調べに対し


「誘っていただいたのでついつい飲んでしまいました」

と供述しています。
    
その店を出た後、廻りの仲間は次は近くのバーに行くことになり、被告人も誘われましたのでついていきました。次のバーでも被告人は、焼酎他数杯の酒を飲みました。バーを出て仲間はタクシーで帰りましたが、被告人は近くの駐車場に駐車していた普通貨物自動車を運転して、■市内の会社の寮へ向かい冒頭の事故を起こしました。

被告人は、和歌山県の高校を卒業後とび職として働いていました。事件当時は滋賀県■市内の会社で、会社寮に寄宿しながら働いていました。

被告人には、酒気帯び運転の前科が2件あります。



 被告人質問   
  
弁護人
あなたは、和歌山で5年前に酒気帯び運転で50万円の罰金刑を受けていますね。その際には飲酒運転はしないと誓ったのでないですか。
被告人
誓いました。

弁護人
■市のバーベキューでは翌日早朝の仕事を考えて酒を飲まないようにしていたのに、何故▲市の次の店についていこうと思ったのですか。
被告人
誘っていただいたのてしかたなく行きました。

弁護人
それなら何故タクシーで行かなかったのですか。
被告人
タクシーは仲間で定員オーバーになりましたので、次の店でも酒を飲まなければよいと、最悪飲んでも代行を頼んで帰れば良いと考え明日仕事で使う貨物自動車で向いました。

弁護人
あなたは、次の店で大分飲んでいますね。その時の考えはどうだったのですか。
被告人
誘われたのでついつい飲んでしまいました。代行運転を頼もうと思っていました。

弁護人
また次のバーへも行って大分飲んでいますね。
被告人
店を出て代行運転を頼もうとしましたが、遅く来てくれないと思い、また明日の朝早いので、できるだけ早く寮に帰って少し休んでから出たいと思い、運転できるだろうという安易な気持ちで運転してしまいました。
 
弁護人
あなたは今の会社で何年働いていますか。
被告人
14,5年働いています。

弁護人
あなたの会社の社長は、あなたを今後どう処分すると言っていますか。
被告人
社会復帰後も雇用すると言ってくれています。

弁護人
あなたは、免許取消し処分を受けていますが、免許なしで現場で働くことができるのですか。
被告人
他の仲間の運転で現場に出向き働くことができます。

弁護人
普通なら懲戒免職でもおかしくない状況で、面倒を見ると言ってくれていることに対し、あなたはどう思いますか。
被告人
大変申し訳なく、今後酒とのつきあいは絶対しないと誓います。

検察官
あなたのアルコール検知量は基準の数値の4倍ですよ。分かっていますか。
被告人
分かっています。

検察官
あなたは、飲酒運転で逮捕されるのは今回で3回目ですよ。1回目は和歌山で飲酒して事故を起こしています。2回目は飲酒運転で信号無視、3回目は本件です。平成30年8月には事故で罰金をうけています。甘く考えているのではないですか。
被告人
今後酒とのつきあいはしません。


 論告求刑 

検察官
求刑 懲役8月


 弁護人最終弁論 

弁護人
今回の事故は人身事故にならず、軽微な事故であった。
被告人本人が酒とのつきあいを絶つと誓っており、再犯の可能性はない。従って、執行猶予付きの判決を希望する。


 裁判の向う側    
 
被告人のあまりの甘い考えに憤りを感じてしまいました。「誘われたのでつい飲んで運転した」しかも過去に同様の過ちを起していながら、またも繰り返すとは、あきれをとおり越して怒りを感じました。こういう考えのドライバーが車を運転しているとは恐怖を感じます。煽り運転も恐怖ですが、飲酒運転は更に恐怖です。

弁護人は最終弁論で「人身事故にならず、軽微な事故であった」と述べました。このような認識は世間から離れたものと思います。たまたまの結果です。ひとつ間違えれば、人命に係わったかも知れません。認識を改めていただきたいと思います。

基本中の基本「飲んだら乗るな。乗るなら飲むな。」

クリスマスや年末年始を迎え、酒を飲む機会が増えますが、全てのドライバーは、飲酒運転を絶対しない、廻りの人達も飲酒運転は絶対させない、を守って楽しく過ごしたいものです。

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