2019年5月20日月曜日

【裁判傍聴記】自分の意志だけではどうしようもなかったんです

被告人は■市内のコンビニで化粧品他を購入し、一部(約8,000円)を自分のバッグに隠し入れ、残りはレジでお金を支払いました。被告人が店を出たところで、コンビニの店員が声を掛け、万引きの事実を伝えたうえで警察に通報しました。被告人は駆け付けた警察官により窃盗の容疑で現行犯逮捕されました。警察署での取り調べの中で、被告人の覚醒剤使用の前科が判明したため、検査したところ覚醒剤反応が出たため、覚醒剤取締法違反の容疑でも逮捕されました。

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罪 状 覚醒剤取締法違反、常習累犯窃盗
被告人 40代後半 女性
求 刑 懲役5年


 事件の概要 

平成30年10月〇日、被告人は■市内のコンビニエンスストアーで化粧品他を購入し、一部(約8,000円)を自分のバッグに隠し入れ、残りはレジでお金を支払いました。

コンビニエンスストアーの店員は、被告人が商品を自分のバッグに隠し入れていることを把握していましたので、被告人が店を出たところで、声を掛け万引きの事実を伝えたうえで警察に通報しました。被告人は駆け付けた警察官により窃盗の容疑で現行犯逮捕されました。被告人は逮捕当時、約18,000円の現金を所持していました。
 
警察署での取り調べの中で、被告人の覚醒剤使用の前科が判明したため、検査したところ覚醒剤反応が出たため、覚醒剤取締法違反の容疑でも逮捕されました。被告人の供述によると、被告人は万引き事件の3日前に、自宅で覚醒剤を自身の体内に注入していたことが判明しました。

被告人は、前科6犯で内4件が覚醒剤によるものでした。直近では、平成29年に大津地裁で窃盗罪で懲役刑の実刑で刑務所に服役していましたが、約1年後の事件から約2か月前の平成30年7月に仮釈放となり、刑務所から出所していました。

被告人は、仮釈放となった平成30年7月末に大阪西成で密売人より覚醒剤を購入したと供述しています。

被告人は、■市内で生まれ、現在は肉親の身寄りはなく、離婚歴はありますが、現在は結婚して夫婦2人で生活しています。


 弁護側提出証拠   

弁護人 弁護側の提出証拠として、弁△号「被告人自筆の反省文」を提出します。


 被告人質問  

弁護人 
何故覚醒剤をやめられないのですか。
被告人 
自分の意志だけではどうしようもなかったんです。やめようと思っていたんですが、やめられなかったんです。

弁護人 
刑務所の中で治療プログラムがあったと思いますが、受けましたか。
被告人 
受けていましたが、繰り返してしまいました。

弁護人 
ダルクという薬物依存症専門の治療機関を紹介しましたね。 
被告人 
今まで専門の治療機関に参加できなかったのですが、先生に紹介いただいたダルクで治療を受けて更生したいと思っています。
 
弁護人 
社会復帰後に、ダルクの治療を受けるにせよ、ご主人の監護なり協力が必要ですが、ご主人の協力は得られますか。
被告人 
社会復帰後の話はしましたが、ダルクの話はしていません。現在主人から離婚の話が出てきています。主人には許してほしいと思っています。

検察官 
社会復帰後、再犯防止のためにあなたとして何が必要ですか。
被告人 
ダルクに参加して治療を受けることです。
検察官 
あなたはダルクの話ばかりしていますが、ダルクは万能でありません。あなた自身の意志の問題です。

裁判長 
今年7月に仮釈放後、すぐに何故覚醒剤を入手したのですか。
被告人 
仮釈放されて後、旦那と喧嘩してムシャクシャしていました。
 
(参 考)
  ダルクは、覚醒剤他の薬物依存から解放されるためのプログラムを持つ、民間の薬物依存症リハビリ施設で、入寮して薬物依存者同士が共同生活をして薬物から遮断した生活を送り薬物依存者同士が共に成長することで薬物依存を絶つことを、目標にしています。
     (引用:「全国ダルク」ホームページ)


 論告求刑   

検察官 常習性があり、再犯の可能性が高い。
    求刑 懲役5年

 
 弁護人最終弁論 

弁護人 被告人は社会の中で更生させることが、再犯防止に最善です。
保護観察付の執行猶予の判決をお願いします。


 被告人最終陳述 

被告人 社会の中でやり直したいです。


 裁判の向う側 

覚醒剤などの薬物依存は病的な常習性があることや、最近は再犯を繰り返す万引きは、盗症として精神障害の一種として取り上げられていますが、本件の被告人は病的なものもあるかも知れませんが、大半は被告人自身の身勝手な考え方に原因があるのではないかと感じました。

コンビニでの一部はレジを通して正当化し、残りは万引きするなど犯行は計画的で悪質に感じます。また、覚醒剤使用についても仮釈放後すぐに自らが西成に出向き購入するなど自身の意志の作用の方が大きいように感じました。

被告人質問の答弁でも犯行自体の重さを、軽く考えているようにも感じました。

社会の中での更生活動がどれほどの効果があるのて疑問です。覚醒剤事件では、最近も女優の三田佳子さんの次男が逮捕され、横浜地裁の判決で執行猶予付きの判決が出ましたが三田佳子さんの次男の出所後の態度を見ていても、自身の犯した 罪を軽く考えているように感じました。

社会から隔離して、ある程度の期間刑務所のなかで実のある更生をさせるということが必要ではないかとも思います。

それにしても、大阪の西成に行けば簡単に覚醒剤が手に入るのですね。他の裁判でも、被告人が西成で覚醒剤を入手したという供述を、何度か聞きました。

西成は昔は大変治安が悪く怖い地域、という印象がありましたが、地域の皆さんの努力とインバウンドの勢いもあって、誰もが気軽に入っていく地域になっているようですが、一歩足を踏み入れると、覚醒剤の密売人と簡単に接触できるという、危険な面もまだまだ残っているようです。

大阪万博も決定したことです。西成の闇の世界を一層していただき、覚醒剤で泣く人がゼロになるよう、警察の努力に期待したいものです。

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