2020年4月4日土曜日

京都市梅津の「梅宮大社」は酒造りと子授け安産の神様をお祀りしています

京都市右京区梅津の「梅宮大社(うめのみやたいしゃ)」は、初春に香り立つ梅の神社としても有名ですが、「子授け・安産」の神様ということでも崇敬を集めています。京都市内では子授け・安産の神様として「わら天神(敷地神社)」に次いで人気のある神社です。

二之鳥居
梅宮大社(うめのみやたいしゃ)御由緒

御祭神 
本殿四柱
・酒解神(さかとけかみ)ー大山祇神(おおやまづみのかみ)ー酒造りの守護神 
・大若子神(おおわくこのかみ)ー瓊々杵尊(ににぎのみこと)
・小若子神(こわくこのかみ)ー彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)
・酒解子神(さかとけこのかみ)ー木花咲耶姫命(このはなのさくやひめのみこと)

相殿四柱
・嵯峨天皇(さがてんのう・第52代天皇)
・橘嘉智子(たちばなのかちこ・檀林皇后) 
  嵯峨天皇皇后 梅宮大社に祈願して仁明天皇を懐妊
・仁明天皇(にんみょうてんのう・第54代天皇) 嵯峨天皇皇子
・橘清友(たちばなのきよとも) 橘嘉智子の父

御神紋
橘(たちばな)

創 建
創基は奈良時代
創建は平安時代前期

境内摂社
・若宮社
  御祭神:橘諸兄(たちばなのもろえ)
・護王社
  御祭神:橘氏公(たちばなのうじきみ)、橘逸勢(たちばなのはやなり)

境内末社
・稲荷社
・西梅津神明社
  御祭神:天照大神(あまてらすおおかみ)、豊受大神(とようけおおかみ)
・境外末社八社を合祀した末社
  幸神社、天皇社、愛宕社、薬師社、住吉社、厳島社、春日社、天満宮

例 祭
神幸祭:5月3日
梅・産祭(うめうめまつり):3月第1日曜
献酒報告祭:4月の中の酉の日
桜祭:4月第3日曜日

所在地
京都市右京区梅津フケノ川町30

ご利益
酒造守護、子授・安産守護、学業成就守護、縁結びの神、音楽芸能の神

随身門(楼門)
「梅宮大社」は、四姓(源平藤橘)の一つの「橘氏(たちばなうじ)」の氏神です。「橘氏」は飛鳥時代末期に「県犬養三千代(あがたいぬかいのみちよ・橘三千代)」とその子「葛城王(かつらぎおう・後に改名して橘諸兄(たちばなのもろえ)」を祖として興った皇族氏族です。

「梅宮大社」の本殿に祀られている御祭神「酒解神」始め本殿四柱は「梅宮大社」特有の神様です。「酒解神」の「サカトケ」を「辟解」として悪霊を祓う神とする説や、「堺解」として境界にいて悪霊を鎮める神とする説などがあるようですが、いずれにしても悪霊を祓う神として鎮座されているということです。

「梅宮大社」は、奈良時代に「橘諸兄」の母「県犬養三千代(橘三千代)」が、橘氏一族の氏神として「山城国井出庄(現代の京都府井手町)」の現在は廃寺となっている「円堤寺(現代の井出寺跡)」に祀ったのが始まりであったと伝えられています。

その後、奈良時代中期の天平宝宇年間(757年~765年)に、聖武天皇の妃で橘三千代の娘の「光明皇后(こうみょうこうごう)」と藤原武智麻呂(ふじわらむちまろ)夫人で同じく橘三千代の娘の「牟婁(むろ)」が奈良の都に遷座し、更に後に泉川(現代の木津川)の上流の「桛山(かせやま)」に遷座されました。

更に平安時代の始め、嵯峨天皇の皇后「橘嘉智子(たちばなのかちこ・檀林皇后)」によって「葛野川(現代の桂川)」のほとりの「梅津の地」に遷座されました。

「梅宮大社」は、延長5年(927年)の「延喜式」記名帳面では「名神大社」に列せられ、平安時代中期には、名社として「二十二社」の一つに列しています。

平安時代には年2回の「梅宮祭(うめのみやまつり)」が「勅祭」として行われていたことが知られています。「橘氏」衰退に伴い社勢も衰えましたが、中世も「梅宮祭」は続いていました。その後、室町時代の文明6年(1474年)には戦乱に巻き込まれ、社殿が焼失しました。その後再建されましたが、再度江戸時代の元禄11年(1698年)に火災により焼失、その2年後には「五代将軍徳川綱吉」の命で亀岡城主が奉行となって再建し、元禄13年(1700年)には現在の社殿が造営されました。

主要な社殿の本殿、拝殿、若宮社、護王社、随身門(楼門)、東門は、元禄13年(1700年)に造営されたものです。

拝殿
本殿(奥)と唐破風造の拝所
本殿
東門
子授・安産守護とまたげ石

「木花咲耶姫命(このはなのさくやひめのみこと)」「瓊々杵尊(ににぎのみこと)」の皇后でしたが、夫である「瓊々杵尊」から浮気で身ごもったのではないかと疑われ、身の潔白を証明するために「無戸室(うつむろ・戸の無い産屋)」に入って、炎の中で「彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)」を安産しました。「梅宮大社」が安産の神と崇められたのはこのためで、後に「檀林皇后(だんりんこうごう)」も「梅宮大社」に祈願して「仁明天皇(にんみょうてんのう)」を懐妊安産しました。この時「檀林皇后」は、境内の男石と女石それぞれ2個の丸石の「またげ石」をまたいだという云い伝えがあり、また産殿の床に梅宮大社社殿の砂を敷いて安産したということから、「産砂(うぶすな)」のお守りというのが安産のお守りとして用いられ、現代す。

「またげ石」は本殿の東側にあり、本殿に参殿して祈祷を受けた後に「またげ石」の男石・女石を夫婦それぞれが跨げば子を授かると云い伝えられています。参殿せずに「またげ石」のご利益にあやかりたい場合は、板塀の隙間から「またげ石」に祈願することができます。

「子授け・安産」の御神徳は、「梅」を「産め」とも掛けているようですね。

またげ石 拝所
「またげ石」の画像はWikipediaから借用しました。

またげ石(Wikipedia)
酒造守護

「梅宮大社」は日本酒の三大酒造りの神社として有名です。京都の「松尾大社」、奈良の「大神神社」、そしてここ「梅宮大社」は酒造りの始まりとされている神社です。

「酒解神」の子の「酒解子神」は、「大若子神」との一夜の契りで「小若子神」が生まれたことを大喜びして「狭名田(さなだ・瓊々杵尊が初めて水稲を作ったとされる田)」の稲を採って「天甜酒(あめのたむざけ)」を造り、これを飲んだという神話から酒造の神として崇敬されています。

現在も、全国の酒造メーカーが参拝に訪れ、随身門の屋上や境内には各社の奉納酒樽が飾られています。

随身門の奉納酒樽
境内手水舎横の奉納酒樽
境内摂社

若宮社

若宮社
護王社

護王社
神 苑

境内東門から入る神苑は池を巡る回遊式庭園が広がっており、梅の名所として知られています。毎年2月から3月の始めにかけて梅の花と香りを求めて、全国から多くの参拝者が訪れています。

神苑は有料で入苑料は大人600円、小人400円です。(団体は別料金)
開苑時間は9時~17時です。

神苑
境内末社

稲荷社

稲荷社
西梅津神明社

西梅津神明社
西梅津神明社
境外末社八社を合祀した末社

八社相殿
右近の橘と左近の梅

神社の本殿の前や桃の節句の雛飾りの前には、「右近の橘と左近の桜」が配置されています。京都御所の紫宸殿の前や平安神宮の本殿の前にも「右近の橘と左近の桜」が植えられています。右近と左近はそれぞれ「右近衛府」「左近衛府」の略で警護を意味します。従って本殿の玉座から正面を見て右側が「右近」、左側が「左近」となります。
右近の橘の「橘」は遣隋使が大陸から持ち帰った柑橘類のことを云い、甘い果実を不老長寿の食べ物として大切に扱われ、宮殿の前に植えられています。左近の桜は平安時代には「梅」であったようです。「梅宮大社」に「右近の橘と左近の梅」が植えられているのは納得できるところです。

右近の橘

右近の橘
左近の梅

左近の梅
磐 座

境内随身門の東側に「磐座」が鎮座しています。この磐座は境外にあったものを道路整備の際の昭和59年(1984年)にこの場所に移されました。

御祭神 
・天宇受売命(あめのうずめのみこと・女神)
・猿田彦神(さるたひこのかみ・男神)

磐座
猫神社

「梅宮大社」には境内で飼われている大勢の猫がおり、「猫神社」と呼ばれています。
皆それぞれ人なつこく、近づいても逃げません。猫たちは時に授与所でおみくじを引くのを邪魔したり、人が歩くのを邪魔したりしますが、猫好きにとっては大変うれしい場所です。





梅の名所として全国的にも知られている「梅宮大社」は、「子授け・安産」の神様としても全国的に有名な神社です。

滋賀県大津市衣川の「梅宮神社」は、当社「梅宮大社」の御祭神四柱を分祀してお祀りしています。「梅宮神社」には「またげ石」の姉妹石の「産めこ石」があり、子授け・安産を願う人達の崇敬を集めています。


アクセス
阪急電鉄嵐山線「松尾大社駅」下車 松尾橋を渡って東へ徒歩約15分

0 件のコメント: