2020年3月2日月曜日

JR東海CM「そうだ京都、行こう」で一躍注目された山科の「毘沙門堂門跡」

京都市山科区のJR山科駅から北へ約20分、駅周辺の賑やかさが嘘のような閑静な住宅街を抜けると「毘沙門堂門跡」の標石が見えます。ここはかつて、JR東海の旅キャンペーンCM「そうだ京都、行こう」で「春の枝垂桜」「秋の紅葉」で一躍脚光を浴びた門跡寺院です。

仁王門への階段

毘沙門堂門跡(びしゃもんどうもんぜき)由緒 


寺 号 護法山(ごほうざん)安圀院(あんこくいん)出雲寺(いずもじ) 
    別称「毘沙門堂門跡(びしゃもんどうもんぜき)」
 
宗 旨 天台宗

御本尊 毘沙門天

創 建 大宝3年(703年・前身の出雲寺創建)

開 基 行基(ぎょうき、飛鳥時代の僧)

再 興 天海(江戸時代初め慶長年間の天台宗の僧)

中 興 公海が天海を継ぎ寛文5年(1665年)に当地で完成

寺格等 天台宗五箇室門跡、京の七福神「毘沙門天」、神仏霊場巡拝の道 

所在地 京都市山科区安朱稲荷山町18

「そうだ京都、行こう」は、JR東海が平成5年(1993年)から実施しているテレビのCMやポスター、雑誌による京都観光キャンペーンです。京都人でも知らないような京都の魅力を映像とキャッチコピーで紹介して、首都圏や東海圏からの観光客を京都に招こうという取り組みで、現在も続けられています。もちろん目的は観光客に東海道新幹線を利用してもらうというものです。
JR東海によって地道に続けられているこのキャンペーンで、京都の観光業界と京都の神社仏閣は随分と潤ってきたものと思います。

「毘沙門堂門跡」は、「そうだ京都、行こう」キャンペーンで、平成12年(2000年)に早春の枝垂桜で紹介され、更に平成23年(2011年)には秋の紅葉で紹介され、一躍全国的に脚光を浴びました。

「毘沙門堂門跡」の門跡とは皇族が住職を務めた、務めていた寺院のことです。

楓の茂る参道
「毘沙門堂」の前身は、文武天皇(もんむてんのう・飛鳥時代の第42代天皇)の勅願で
、僧「行基」によって、相国寺の北の上御霊神社の付近の出雲路の地に開基されました。時に飛鳥時代の大宝3年(703年)のことでした。当初出雲路にあったことから「出雲寺」と称されました。

延暦年間(782年~805年)に伝教大使最澄が自作の「毘沙門天」をご本尊として安置したことから「毘沙門堂」と呼ばれることになりました。

平安時代末期以降には度重なる戦乱によって荒廃しましたが、後に「平等寺」、「尊重寺」、「護法寺」の3ヶ寺を統合して、出雲路の地に「護法山出雲寺」として建立されました。その後、応仁の乱によって焼失し、再建されるも元亀2年(1571年)またも焼失しました。

その後、江戸時代初期に徳川家康の側近であった天台宗の僧「天海」によって復興の活動が開始され、天海亡き後はその弟子の僧「公海」が復興を引き継ぎ、寛文5年(1665年)当地山科安朱の地にようやく再建されました。

後西天皇(ごさいてんのう・第111代天皇)の皇子「公弁法親王(こうべんほっしんのう・1669年~1716年)が入寺されて以降門跡寺院となり、以来皇族や摂関家の子弟が門主を務める「天台宗京都五門跡」の一つの「毘沙門堂門跡」となりました。

極楽橋

後西天皇が当寺に行幸された際に、「この橋より上はさながら極楽浄土のような清浄華麗な聖域である」と感嘆され、極楽への橋「極楽橋」との勅号を賜ったということです。明治以前まではいかなる高位の人もこの橋の手前で下乗して参拝したということです。

極楽橋
仁王門への階段の両側には楓の木が茂っており、初夏には青紅葉、秋には紅葉のトンネルが迎えてくれます。

仁王門参道
勅使門へ向かう参道にも楓の木が茂り、初夏の青紅葉と秋の紅葉が楽しませてくれます。


地蔵堂

仁王門への参道途中に子安地蔵の「地蔵堂」があります。

地蔵堂
地蔵菩薩
仁王門

仁王門
仁王門で守護する阿形
仁王門で守護する吽形
毘沙門堂本堂

仁王門を抜けて「手水舎」で清めた後、本堂に向かい、周囲に透塀を配した朱塗りの「檜皮葺・向唐破風造り」の門をくぐると「本堂」が現れます。本堂は寛文6年(1666年)に建立されています。

唐門と本堂を囲む透塀
本堂には「出雲寺」の扁額が掲げられ、正面の梁には皇室の象徴となっている金の「16葉八重表菊」の菊花門が飾られ、また朱で彩色された柱や垂木の周辺には極彩色の象や獅子などの彫刻が鮮やかに飾られています。

「出雲寺」の扁額
象の飾り



本堂には、天台宗の宗祖「伝教大師最澄」作と伝えられるご本尊「毘沙門天」が安置されていますが、残念ながら秘仏となっていますので拝観できません。

本堂の背後には、「霊殿」と「宸殿」があります。

「霊殿」の天井には「狩野主信(かのうもりのぶ)」の筆によるどの方向から見ても自分を睨んでいるように見える「八方にらみの龍」が描かれています。また「霊殿」には、「円山応挙(まるやまおうきょ)」「衝立」に描いた一匹の鯉は、どの方向から見ても鯉が自分に向かって泳いでくるように見えます。

「宸殿」には、「狩野益信(かのうますのぶ)」の筆による「動く襖絵」があります。

「宸殿」の山側には回遊式庭園の「晩翠園(ばんすいえん)」が配置され、池の傍の楓の秋の紅葉は見るものを楽しませてくれます。

「宸殿」とは、皇族が住職を務める寺院(門跡寺院)で住職が公式行事を行う御殿のことです。

本堂内他何れも撮影禁止となっていますので、ご注意ください。

右側が霊殿、左の建物が宸殿、渡り廊下の奥が晩翠園
宸殿
「本堂」、「霊殿」、「宸殿」、「晩翠園」の拝観は、大人500円、高校生400円、小中学生300円、小学生未満無料となっており、本堂の門を抜けて右側の受付で拝観料を支払って拝観することができます。

手水舎

仁王門を入ってすぐの右側に手水舎があります。お清めをしてから参拝しましょう。

手水舎
一切経蔵

「一切経蔵」とは、仏教の経典を収蔵する建物です。仁王門を入って右側に配置されています。

一切経蔵
一切経蔵の内部には千手観音
弁天堂

本堂の右側奥の「弁天堂」には、「弁財天」が祀られています。



弁財天社
鐘楼

「鐘楼」は、寛文4年(1666年)に建立されました。二階建てで下層は袴腰となっています。鐘楼の前には「藤棚」があり、4月下旬から5月中旬にかけてが見ごろです。

鐘楼と藤棚
宸殿前の枝垂桜とソメイヨシノ

「宸殿」前の見事な枝ぶりの枝垂桜です。赤い実を付けているのは南天です。

枝垂桜
周辺には、ソメイヨシノが枝を伸ばしています。

ソメイヨシノ
白梅が8分咲きでした。



勅使門

残念ながら、「勅使門」は工事中でした。「勅使門」とは天皇の勅使が寺院に参拝したときに、その出入りに使われる門のことです。

工事中の勅使門
工事中の勅使門
勅使門への参道も、初夏の青もみじ、秋の紅葉が楽しめます。

勅使門への参道
勅使門下の楓の林
薬医門



宸殿の玄関

「宸殿」の玄関には、「護法山」の扁額が掲げられています。

宸殿の玄関
宸殿の玄関の護法山の扁額

「多聞閣」と駐車場

「毘沙門堂」の西の端の駐車場の向いにお休み処・お食事処の「多聞閣」があります。甘味やお食事をいただくことができます。営業時間は事前にお確かめください。

多聞閣
駐車場もありますが、途中の道路が狭いのでお勧めできません。徒歩で行かれるのをお勧めします。

駐車場
山科駅からの参拝道

山科駅からはJR琵琶湖線の南北の地下通路を抜けて、北へ進みます。途中「山科疎水」の橋を渡ると「毘沙門堂」の標石がありますので、ひたすら坂道を上ります。




更に坂道を上ると、右手に「ちりめん山椒の店 京小町もり」のお店があります。メディアでも紹介され有名になったちりめん山椒の店です。


関西テレビの朝のバラエティ番組「となりの人間国宝さん」でも紹介されました。


「毘沙門堂」への道は、閑静な高級住宅街の間を抜けていきます。



JR東海の「そうだ京都、行こう」キャンペーンは現在も続けられています。神社仏閣の情報だけでなく、グルメ情報や季節の情報、京都旅のお役立ち情報が随時アップされていますので、是非京都散策の参考にしてみてはいかがでしょうか。

アクセス
JR琵琶湖線 山科駅下車 徒歩にて20分



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