2019年8月30日金曜日

「おかめの物語」や「大根炊き」で知られる「千本釈迦堂」


「千本釈迦堂」は、真言宗智山派の寺院で、冬の風物詩「大根炊き」は毎年暮れのテレビニュースの常連となっています。また、建物の上棟の際に大黒柱に飾られるお多福の面を付けた御幣は、本寺の本堂にまつわる「おかめの物語」が起源となっています。
「千本釈迦堂」は京の六花街の一つ「上七軒」のすぐそばにあります。

千本釈迦堂参道

 大報恩寺(だいほうおんじ)由緒 


寺 号 瑞王山(ずいおうざん)大報恩寺 
通 称 千本釈迦堂(せんぼんしゃかどう)

宗 旨 真言宗智山派

御本尊 釈迦如来

創 建 承久3年(1221年)

建 立 安貞元年(1227年)

創 起 求法上人 義空

ご利益 縁結び・夫婦円満・子授け・災難厄除・招福

「千本釈迦堂」は、十数年にわたる比叡山での修行を終えた※「義空上人」が当地を得て、承久3年(1221年)草堂に一仏十弟子を安置して創建されたということです。

創建当初は「俱舎(くしゃ)、天台、真言と三宗の霊場」として創建され、その後、安貞元年(1227年)尼崎の材木商から材木の寄進を得て本堂を建立し、その後も次第に堂塔伽藍他の堂宇も整っていき壮麗な寺院となっていきました。しかし、応仁の乱を始めとする度々の災禍に本堂以外の堂宇は焼失してしまいました。

幸い、本堂の建物はこれらの度重なる戦乱や大火から免れて奇跡的に現存し、築800年の京都で最古の木造建築として国宝に指定されています。

現在「千本釈迦堂」は、真言宗智山派の寺院ですが、創建当初の三宗の霊場からいつの時点で真言宗智山派に宗旨を定めたのかは、定かではありません。

堂内には、行快作の本尊「釈迦如来坐像」をはじめ、「六観音菩薩像」、「千手観音立像」、「銅像釈迦誕生仏立像」など数多くの文化財を所蔵しています。

※「義空上人」は、藤原秀衛(ふじわらのひでひら)の孫にあたり、19歳で比叡山に向かい「澄憲僧都」に師事して十数年修行を続けました。

本堂
本堂
本堂の屋根は桧皮葺

 おかめの物語 


「義空上人」が本堂を造営した際、建築方の棟梁は「高次」という大工でした。「高次」は棟梁として着実に仕事をこなしていきましたが、あるときやってはならないヒューマンエラーをやってしまいました。大事な四天柱の一本を誤って短く切り落としてしまったのです。「高次」はこのことに大変に心を痛め、毎日落ち込んでいました。「高次」のこの落ち込む様を見ていた「高次」の妻「阿亀」は古い記録をたぐって「斗組」という工法を提案し、結果してこの工法で見事に本堂の骨組みが出来上がりました。

その後、安貞元年12月26日本堂の上棟式を迎えることとなりましたが、この日を待たずして「阿亀」は自刃して命を果てました。「おなご」の提案で棟梁の仕事を成し得た、ということが世間に知れ渡ると「高次」の名に傷がつくということを避けたかったのです。これを知った「高次」は本堂上棟の日に、妻の面を御幣に付けて飾り「阿亀」の冥福と本堂無事完成を祈ったということです。

この話を聞いた人々は、「阿亀」の菩提を弔うために堂内に宝篋印塔を建て、この塔を「おかめ塚」と呼ぶようになりました。

現在京都を中心として関西では、建物の上棟の際に大黒柱に「おかめ面」を付けた「上棟御幣」を飾りますが、これは「阿亀」の徳により「家宅の火災除け」「家内安全と繁栄」を祈る、として始められたものです。

この「高次」と「阿亀」の夫婦の逸話から、「おかめ塚」にお参りすることで「縁結び」「夫婦円満」「子授け」にご利益があるとされています。

また、「阿亀」の徳は「災い転じて福となす」ということから、「建築の無事成就」、「工事安全」、「女一代厄難消滅」、「商売繁栄」などの招福信仰のシンボルとして全国に広がっています。

「おかめ塚」の左にある「阿亀」の大きな像は、最近のものですが台座には「阿亀多福像」とあります。「阿亀」のふくよかでやさしい顔つきを見ていると、「福多かれ」と祈らずにはおられません。

境内の右側が「おかめ塚」左側が「阿亀多福像」
「阿亀多福像」と「御幣」

 阿亀桜 

本堂前の境内中央に、見事な「しだれ桜」が枝を張っています。「おかめ塚」にちなんで「阿亀桜」と名付けられ、桜の季節には枝垂れた枝の桜花が地面に這う様は、着物のすそを引きずる姿に例えられています。桜の季節に是非訪れたいものです。

阿亀桜
 大根焚き 

「大根焚き(だいこだき)」は京都の師走の風物詩で、京都人は「千本釈迦堂」の「大根焚き」のことがテレビやラジオのニュースで流れると、「年の暮れ」を感じるものです。

「千本釈迦堂」の「大根焚き」は、12月8日の未明にお釈迦様が悟りを開かれたことにあやかって、12月7日と8日の2日間、大根の切り口に梵字を書いて供え、他の大根と一緒に味付けして煮込んだものを参拝者にも分けて、「悪病除け」と「健康増進」を願う年中行事です。

この「大根焚き」の行事は、京都の他の寺院でも行われており、由来や意味合いは寺院によって異なりますが、冬場に大根を焚いて参拝者にふるまうという点は共通しています。

 ぼけ封じ観音菩薩 


「千本釈迦堂」は、「ぼけ封じ三十三霊場・十楽観音霊場」の第2番札所の観音霊場となっており、本堂の西側に「ぼけ封じ観音菩薩像」があります。「ぼけ」心当たりの方は、是非早めにお参りしておきましょう。

ぼけ封じ観音菩薩
参考に、近畿のその他の「ぼけ封じ十楽観音霊場」についても紹介されていました。



 七福神布袋尊 


本堂の東側方に「布袋尊」の石像があります。「福徳長寿」「家運隆盛」など厄を祓い福運を招くご利益があります。

七福神 布袋尊

 北野経王堂願成就寺 


「足利将軍義満」は、明徳2年(1391年)の「明徳の乱」において討ち滅ぼした敵方「山名氏清」とその一族、ならびにその他戦に倒れた敵・味方の兵士の供養を行うため、
北野天満宮の前に大堂を建立し、「北野経王堂願成就寺」と名付けました。その後、江戸時代に入り、この大堂は荒廃が著しくなったため解体縮小されて「千本釈迦堂」の境内の一画にそのミニチュアが建立されました。大堂に収蔵されていた仏像他は「千本釈迦堂」の堂内に移され保存されています。

北野経王堂願成就寺

 不動明王堂 

「山名氏清(明徳の乱)」「山名宗全(応仁の乱)」の稔持仏「不動明王尊」


不動明王尊

 稲荷社 


稲荷社

 山門と門前の街並み 


境内と山門周辺では、7月9日~12日の間「陶器市」が開かれます。

山門
門前の街並みは、京都らしい昔ながらの穏やかな街並みが続いています。




穏やかな空気が流れるお寺さんでした。

アクセス
JR京都駅にて市バス50番系統(立命館大学行)乗車 上七軒バス停下車 徒歩5分


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