2019年5月24日金曜日

裁判傍聴のすすめ その6 「裁判員裁判」「裁判所あるある」

前回は「裁判傍聴のすすめ その5 「裁判ミニ知識」「裁判所あるある」をご紹介させていただきました。

今回も、前回に引き続き刑事裁判をメインに「裁判ミニ知識」や、「裁判所あるある」を紹介させていただきます。



「裁判ミニ知識」

 裁判員裁判 

平成21年にスタートした「裁判員裁判」制度と、日本国民であれば、誰もが選ばれる可能性のある裁判員裁判の「裁判員」について、「最高裁判所ホームページ」と、最高裁判所が発行しているリーフレット「裁判所ナビ」を引用して、紹介させていただきます。

裁判を傍聴していますと、月に1~2回程度は裁判員裁判での法廷で傍聴することことがあります。

裁判員裁判の対象となる事件は、ほとんどが新聞やテレビなどのメディアで話題になっている事件ですので、その裁判にはテレビや新聞の記者が大勢傍聴に来たり、テレビの中継車が裁判所の駐車場に止まっていたり、時には「法廷画家」が傍聴席に座ってスケッチをしたりします。

法廷の傍聴席の中央部分には「記者席」が設けられ、「記者席」の明示がされるため、一般の傍聴人はその席には座れません。

また、「裁判員裁判」は事前にテレビや新聞のメディアが日程を報道しますので、一般の傍聴人が多く詰めかけます。このため一般の傍聴人の傍聴は「抽選」となり、開廷時刻の1~2時間前に指定された場所に並んでの抽選となります。注目を集める裁判(彦根の交番で警察官が上司の警察官を射殺した事件など)では30席程度の傍聴席の抽選に200人程度が詰めかけるほどの高い抽選倍率となります。

抽選の結果、運よく傍聴席が確保できたひとは、IDが登録されたリストバンドを交付されますので、開廷前にリストバンドを裁判所職員に提示し、「持ち物検査」を受けたうえで傍聴席につきます。傍聴席は指定席ではありませんので、先着順に席に着きます。あまり広くない席ですので、身体の大きな人には少し窮屈な席です。

裁判員裁判では多くの場合、テレビの報道の対象となりますので、開廷前に法廷の様子を「テレビカメラで撮影」します。テレビ局の代表1社のみのカメラが2分間、裁判長席を中心に書記官と検察官、弁護人の席を撮影します。ただし、テレビカメラで撮影する際には裁判員は入廷していませんので裁判員がテレビに映ることはありません。また、このとき一般の傍聴人もカメラに映りたくない人は、法廷外に出ることができます。


 裁判員制度 



「最高裁判所ホームページ」と「裁判所ナビ」から一部引用します。

平成16年5月21日「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が成立し、平成21年5月21日から裁判員裁判が始まりました。

裁判員裁判とは、20歳以上の日本国民が裁判員として刑事裁判に参加し、被告人が有罪かどうか、有罪ならば量刑はどうするのかを職業裁判官と一緒に決定する制度です。

国民が刑事裁判に参加することにより、裁判が身近で分かりやすいものとなり、司法に関する国民の信頼の向上につながることを期待しています。国民が裁判に参加する制度は、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア等でも行われています。

裁判員制度では、職業裁判官の裁判長と2人の陪席裁判官に加えて、国民の中から選ばれた裁判員6人+補充裁判員2人の裁判員8人が裁判に参加します。

裁判員制度の対象となる事件は、代表的なものをあげると次のようなものがあります。

・殺人事件
・強盗致死傷事件
・傷害致死事件
・危険運転致死事件
・現住建造物放火事件
・身の代金目的誘拐事件
・保護責任者遺棄致死
・覚せい剤取締法違反事件


 裁判員の選ばれ方 

前年の秋ごろ、20歳以上で選挙権のある人の中から、管内の市町村の選挙管理委員会がくじで選んで作成した名簿に基づき、地方裁判所ごとに「裁判員候補者名簿」を作成します。従って、裁判員は日本国籍を有する人の中から選ばれます。

前年の11月ごろ、「裁判員候補者名簿」に載った人には「名簿記載通知」とともに、1年を通じて就職禁止事由や客観的な辞退事由に該当しているかどうかをたずねる「調査票」が送付されます。(この時点で裁判所へ出向く必要はありません。)

翌年になると事件ごとに「裁判員候補者名簿」の中からさらにくじでその事件の裁判員候補者を選びます。

選ばれた人には、原則裁判の6週間前まで(通常より長い事件の場合は8週間程度まえまで)に「選任手続期日のお知らせ」(このお知らせは法律上「呼出状」と呼ばれています。)とともに、辞退希望等の有無などを確認するための「質問票」が送付されます。

裁判の日数が5日以内の事件では、1事件あたり70人程度の裁判員候補者にお知らせが送られます。「呼出状」と「質問票」が送付されてきた人は、「質問票」に必要事項を記載して返送しますが、辞退が認められる場合には、その旨が裁判所より連絡がありますので、裁判所へ出向く必要はありません。

裁判員候補者のうち、辞退を希望しなかったり、質問票の記載のみでは辞退が認められなかった人は、「選任手続期日」の当日に裁判所に出向く必要があります。
選任手続では、裁判長が候補者に対し、被告人や被害者と関係がないかどうか、不公平な裁判をする恐れがないかどうか、辞退希望の有無・理由などについて質問します。
なお、この手続きは候補者のプライバシー保護の観点から非公開となっています。

最終的に辞退などが認められなかった人の中から、事件ごとに裁判員6人がくじにより選ばれます。

必要な場合は補充裁判員2人を選任します。補充裁判員は、裁判員と同様に最初から審理に立ち会い、裁判の途中で裁判員の人数に不足が生じた場合に、裁判員に選ばれます。補充裁判員は1つの事件につき最大6人まで選任されますが、今まで傍聴した裁判では最大4人でした。補充裁判員は裁判に関する書類や証拠を見ることや、評議を傍聴することができ、裁判官から意見を聞かれることもありますが、審理で聖人被告人に質問することや、評議で意見を述べることもできませんし、評決に加わることもできません。
(いわゆる補欠です。)


 裁判員がすること 

 公判に立ち会う 

裁判員に選ばれたら、裁判官と一緒に刑事事件の法廷(公判廷)に立ち会い、判決まで関与することとなります。公判では、証拠書類を取り調べるほか、証人や被告人に対する質問が行われます。裁判員から証人や被告人に質問することもできます。

 評議・評決 

証拠を全て調べたら、今度は事実を認定し、被告人が有罪か無罪か、有罪だとしたらどんな刑にするべきかを裁判官と一緒に議論し(評議)、決定する(評決)ことになります。

評議を尽くしても、意見の一致が得られなかったときは、評決は多数決により行われます。ただし、裁判員だけによる意見では、被告人に不利な判断(被告人が有罪か無罪かの評決の場面では有罪の判断)をすることはできず、裁判官1人以上が多数意見に賛成していることが必要です。

有罪か無罪か、有罪の場合の刑に関する裁判員の意見は、裁判官と同じ重みを持ちます。

 判決宣告・裁判員の任務終了 

評決内容が決まると、法廷で裁判長が判決の宣告を行います。
裁判員としての役割は、判決の宣告により終了します。

 裁判員の旅費・日当 

裁判員や裁判員候補者等として裁判所に出向いた場合には、旅費(交通費)と日当が支払われます。また、裁判所が自宅から遠いなどの理由で宿泊しなければならない場合には、宿泊料も支払われます。ただし、旅費・日当・宿泊料の額は、最高裁判所規則で定められた方法で計算されますので、実費とは合わない場合があります。

日当の具体的な額は、選任手続や審理・評議などの時間に応じて、裁判員候補者・選任予定裁判員については1日当たり8千円以内、裁判員・補充裁判員については一日当たり1万円以内で決められます。
例えば、裁判員候補者の人については、選任手続が午前中だけで終わり、裁判員に選任されなかった場合は、最高額の半額程度が支払われることになります。


 裁判所あるある 

 裁判所のセキュリティチェック 

4月2日、新年度早々に刑事裁判の傍聴のために京都地裁に行ったところ、地裁の建物の正面玄関以外は全て閉鎖されており、さらに正面玄関ではセキュリティチェックが行われていました。正面玄関を入ると警備員が数名いて、持ち物は空港で行われる手荷物検査場のようにカゴに入れて透視機をくぐらせます。また人間も同じく空港検査と同様に金属感知機を通ります。年度がかわったとたんに物々しいチェック体制に変わっていました。

恐らく、今年3月に東京家裁の前で起きた離婚調停に向かう妻を夫が刃物で刺し、結果妻が死亡するという事件を受けてのことだと思いますが、裁判所建物に入る全ての人に対してセキュリティチェックをすることとなったようです。

ところが、同じ日に大津地裁に行きましたが、こちらでは従来と同様に警備員の前を通りますが、ノーチェックです。裁判所長の裁量による措置だとは思いますが、裁判所によって対応が異なるというのもむどうかなと思いますね。

一部の報道では、「セキュリティチェックを1ヶ所で行うことにより、裁判所建物への出入り口は1ヶ所になり、逆に係争中の相手方を暴力で狙う場合には玄関前だけで待ち伏せれば良いということになり、危険性が増すのではないか」と指摘していました。

開かれた裁判所が望ましいのでしょうけれども、セキュリティチェックで法廷の保安を確保するというのも大事ですので、それはそれでよいのではないかと思います。


 裁判所の引継ぎ 

4月2日火曜日、京都地裁に刑事裁判の傍聴に行きましたところ、裁判予定が終日ほぼ白紙でした。そのため、その足で大津地裁に向かいましたが、こちらも裁判予定はほぼ白紙です。
大津地裁の警備の方に聞きますと、「裁判官や書記官の人事異動の引継ぎで4月の第1週は裁判予定がありません。」とのことでした。なるほど大津地裁のホームページで担当裁判官の欄を確認しますと、大半の裁判官が異動していました。

それでも1週間もの引継ぎ期間は長いのではないかと思い、4月4日の木曜日に大津地裁に行きましたが、裁判予定はほぼ白紙でした。

どうなんでしょう。この間も被告人は裁判が行われず警察の留置場か拘置所に未決勾留されたままです。引継ぎに万全を期すというのはわからないでもないですが、引継ぎのために裁判を空白にするというのはいかがかなとも思いました。

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