2019年5月21日火曜日

【裁判傍聴記】今回に限り執行猶予を付けた

被告人は無免許に係わらずバイクで走行中に、自身のバイクのミラーが相手方車両のミラーに接触し、相手方車両のミラーを損傷しましたが、事故発生を警察へ報告せず、そのまま走り去りました。

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資料画像(by Pixabay)

罪 状 道路交通法違反(無免許運転、当て逃げ)
被告人 20代後半 男性
判 決 懲役6月 罰金5万円 執行猶予3年

 
 事件の概要  

平成30年〇月×日、被告人は無免許に係わらずバイクで走行中に、自身のバイクのミラーが相手方車両のミラーと接触事故を起こし、相手方車両のミラーを損傷しました。自身と相手方双方ともに人身被害はありませんでした。

この際に被告人は、事故発生を警察へ報告せず、そのまま走り去りました。

相手方運転手が警察に通報して、警察が捜査の結果、事実が発覚したものです。


 判 決 

主 文

懲役6月 罰金5万円 執行猶予3年
罰金が支払われない場合は、残額を留置1日5,000円で換算し、その日数留置する。

理 由

証拠調べの結果、起訴状の事実を認定した。

無免許運転については、事実関係は証拠調べのとおり認定した。

当て逃げについての、弁護人からの弁論は「道路交通法第72条の警察への報告義務は人身事故について規定しており、今回の事故は物損事故のみであるため、警察への報告義務があるとはいえない」という主張であるが、裁判所は法の主旨から「警察への通報義務は全ての事故が含まれる」と判断した。

すなわち、道路交通法第72条の後段は、人身・物損問わず、全ての事故について警察への報告義務があると判断する。

[道路交通法第72条]

(交通事故の場合の処置)

交通事故があったときは、通亥交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という」)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためにやむを得ないときは、その他の乗務員。以下各項について同じ。)は警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下各項について同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者のの程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。


量刑の判断

事件は被告人の身勝手な行動が招いたものである。

被告人は、平成29年×月に、道路交通法違反で罰金刑を受けており、1年後に今回の事件を起こしており、法に対する規範意識が低い。

被害車両の損害は軽微であり、賠償も完了している。

父親が監視・監督すると約束している。
被告人は反省の弁を述べているが、充分と断じれるものではない。

よって、再犯の可能性は一応低いものとして、今回に限り執行猶予を付した。

しっかりと反省して、二度と事件を起こさないようにしなさい。


 裁判の向う側 

被告人は20歳を過ぎている成人ではあるものの、判決当日も父親に付き添ってもらっており、頼りないというのか、あるいは発達傷害があるのかというような感じでした。
今後は監督する父親がしっかり見ていただかないと、裁判長が心配したように、再犯の可能性について憂慮せざるを得ないと感じました。

弁護人が道交法第72条の警察官への報告義務を、議論したのはいかがかと思いました。被告人は、無免許を意識したうえでの当て逃げは明白であるに係わらず、何故この問題を争点にしたのか理解に苦しむところです。このことが、かえって裁判長の心証を害したのではないかとも感じました。

事故の軽い重いに係わらず、万一事故を起こした場合は、人身事故の場合は被害者の救護を優先し、決してその場を離れずに警察に通報し、警察官に事故の事実を報告すること。私たちもこのことを肝に銘じて、自動車を運転しましょう。

被告人が、再犯しないよう祈ります。

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