2019年5月24日金曜日

【裁判傍聴記】立ち直るターニングポイントは何回もあったのに

被告人は、パチンコ他の遊興費ほしさに、自身の息子と一緒に自転車8台を盗んで売りさばいて、金を得ていました。
被告人は、法廷で「パチンコはやめます。」「残りの人生をまっとうに生きていきたい。」と誓っていますが、「過去に立ち直るターニングポイントはいっぱいありすぎて。」とも言っていますので・・・・・・

罪 状 窃盗
被告人 40代後半 女性
求 刑 懲役2年6月


 事件の概要 

平成30年9月から10月の間、被告人は長男、三男と共謀して自転車置き場から合計8台の自転車を盗み、誰でも売り買いの出来るインターネットサイトを通じてこれを売却し、金員をせしめていました。
このとき被告人の役割は見張りで、実行犯は長男と三男でした。(長男、三男とも20代)
被害届けを受けた警察の捜査で、被告人グループの犯行と判明し逮捕されたものです。

被告人は、離婚歴があり息子が3人いますが、現在は結婚していません。
被告人は、前刑で刑務所に服役していましたが、出所後は生活保護を受給して生活していました。

ところが本人に浪費癖があるため、月々の生活保護を受給しても直ぐに生活費に事欠くような状況になってきたため、お金の管理を社会福祉協議会にお願いしました。被告人は社会福祉協議会の厳格な管理に嫌気がさし、お金の管理も生活保護の受給も辞退しました。

その後、不定期の派遣で生活していましたが、パチンコ他の遊興費に使ってしまうため、
生活費に事欠くことになったため、長男の家に入り込んで一緒に生活を始めました。暫くしてからは、三男も転がり込み一緒に生活をすることになりました。

その後も不定期の派遣で仕事をしていましたが、直ぐにお金が底をつくため、長男から「盗んだ自転車を売れば金になる。防犯シールははがして買ったと言えば大丈夫。」と云われたのを真に受けて犯行に及んだものです。

被告人は同種の前科が複数あり、これまでに2回刑務所に服役しています。


 検察官・弁護人追加証拠調べ 

前回までの審理で、「起訴状朗読」「罪状認否確認」「冒頭陳述」「証拠調べ」までの手続きは進んでいましたので、本法廷では検察官・弁護人双方から追加申請のあった
「追加証拠調べ」から再開されました。

検察官が追加申請した証拠は、
・平成30年12月×日に被害者に対して被害金額が還付されたという書証です。
弁護側が同意しましたので、証拠として採用されました。

弁護側が追加申請した証拠は
・被告人が書いた反省文1通です。
検察官が同意しましたので、証拠として採用され一部を読み上げられました。
「被害者の方に申し訳ない。残りの人生をまっとうに生きていきたい。」と心情を綴っています。


 被告人質問 

弁護人
長男と窃盗したことについてどう思っている?
被告人
親として恥ずかしくて、他人に合わす顔がありません。

弁護人
働いていたのか?
被告人
前日に電話して翌日仕事があるのか聞いて、無ければ他の派遣会社に電話してというような、定例的な仕事ではありません。明日の生活費を稼ぐためだけの仕事です。

弁護人
方向を間違えている。計画的に考えているのか?
被告人
最初から盗んでとは考えてはいませんでした。
息子から、自転車売ったら金になる、防犯シールははがせばよい、買ったと言えば大丈夫と言われて、自転車を盗ってインターネットの誰でも売り買いできるサイトで売りました。

弁護人
それで得た金でパチンコや無駄遣いをした?
被告人
金がないときの苦しさから、ストレス発散のためでした。

弁護人
今後どうするのか?
被告人
そんなことはやってられないのが分かりました。今日の生活がままならないのに。パチンコはやめます。

弁護人
社会復帰後の親子関係は? 
被告人
一つの線引きを決めて、今のように全てなあなあでは付き合いません。変な上下関係を作らないようにします。
最初私が長男の家に入り込んでいました。そこへ三男も入り込んできました。

弁護人
長男と同居する前はA市で一人で住んでいて、社会福祉協議会に金の管理をお願いしていた?
被告人
不動産屋から紹介されました。

弁護人
被告人はお金の管理が苦手で、社会の支援が必要?
被告人
そう思います。

弁護人
社会復帰後、働くことができる?  お金の管理は?
被告人
働きます。
お金は全ておろさず、必要なお金だけおろして、支払いを先にします。残ったお金は手元に置きません。

弁護人
物を盗むことはしない?
被告人
しません。

検察官
過去に処罰を受けているね?
被告人
刑務所に入り、平成25年8月に出所しました。

検察官
出所後、生活保護で生活して社会福祉協議会でお金の管理を受けていたのに、何故続けなかった?
被告人
事前の説明と実際が違っていました。銀行へも担当者が付いてきて、コンビニに行くにも担当者が付いてきて、独りで出来ませんでした。私って身体障碍者?と思いました。どこに行ってもつきまとわれました。

検察官
それは一時的なもので、ずーっではない。
被告人
ある程度出来るまで、1~2年と言われましたが、窮屈で仕方がありませんでした。

検察官
その後、長男のもとへ?
被告人
長男と一緒に生活しましたが、安定した収入が得られず、保護も受けられませんでしたので、犯行を重ねました。

検察官
悪循環にならないか?
被告人
自分自身が悪循環を切らないといけない、同じような事をしないようにしなければと思いました。

検察官
自転車8台を盗んでいたときに、やめようとは思わなかったのか?
被告人
派遣会社に電話しても仕事がないと言われ、タイミングが悪かったです。全て自分の責任です。

検察官
職業安定所で仕事を探すことはしなかったのか?
被告人
派遣会社は日払いでお金をくれましたので、職安へは行っていません。

検察官
親身に相談できる人は?
被告人
いません。今はいません。
犯罪した人の気持ちを分かってくける施設があれば行きたいです。

検察官
保護会(更生保護会)に行くつもりは?
被告人
自分自身の生活が安定するまでは、見てくれる人が必要ですので、行くつもりです。

裁判長
息子と起こした事件、当時はどういう心境?
被告人
ただながされるままで、考えるのは目の前のことだけでした。

裁判長
母親として教えるべき立場は?
被告人
ありませんでした。

裁判長
社会福祉協議会で付いてこられるのが窮屈ということを相談しなかったのか?
被告人
付き添いをやめるなら生活保護を絶って、アパートも出ていかざるを得ないことになると言われました。

裁判長
振り返ってどう思う? 立ち直るターニングポイントは?
被告人
転職ぐせで2年以上勤めたことがありません。
生活保護を受けたら、家賃滞納しなければ、社会福祉協議会とのわがままをやめれば、息子の所に行かずに住み込みの仕事に就いていたらと・・・ターニングポイントがいっぱいありすぎて。
刑務所に2回行った時も時間はあっのにと思います。


裁判長
息子たちとはお互いに依存しているのか?  向こうはどう依存しているのか?
被告人
息子はお金の価値が分かりません。お互いがそうなので、得たお金と使うお金が反比例していました。互いが互いのお金に依存していました。

裁判長
今後の親子関係は?  お金の面では一線を引くのか?
被告人
お互いの生活がきちんとできるまで、会いません。自分の生活を安定させるまでは会いません。


 論告求刑 

論 告

パチンコ代や遊興費ほしさから犯行を繰り返した。
被告人が見張り役で息子が実行するという、悪質かつ大胆な犯行である。
平成30年9月から10月にかけて、自転車8台を窃盗した。
前刑もマンガ本を盗んで換金するという犯行で、同種再犯である。
規範意識が薄弱である。

求 刑

被告人に対し懲役2年6月を求刑する。


 弁護人最終弁論 

保護観察付きの執行猶予付きの判決を希望する。
親でありながら長男、三男と共謀したとして反省しており再犯の可能性はなし。


 被告人最終陳述 

本当にこのようなところに来るのは最悪です。
人生にとってはおかしいので、やめたいと思っています。


 裁判の向う側 

被告人は息子に言われるがまま、転売目的で自転車盗を続けました。動機はパチンコなどの遊興費ほしさです。同情の余地のない犯行です。
しかも、生活保護や社会福祉協議会からのお金の管理の支援を自ら断ち切ってのあげくの犯行です。

法廷で本人は反省を述べてはいるものの、弁解や言い訳に終始しているようにも聞こえました。何が問題なのかは、自身で考えるしかないのでしょう。

共犯の息子2人も成人した大人です。是々非々の判断は付くはずです。
親子揃って何かが不足しているのでしょう。

被告人は、ターニングポイントは何回もあったのにと嘆いていました。これも弁解・言い訳の最たるものだと思います。確かに人間ですから間違いも犯すでしょう。間違いを犯さない人間などいません。であるからこそ、最初に間違いを犯したときに気付いて、方向転換すべきです。

被告人が再犯せず、本人の言葉どおりまっとうな余生を送られることを祈ります。

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